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未来へ向かって進化する都市型デザイン建築構法の開発・その4 ラグスクリューボルトによるハイブリッドWS 造の耐力 −新接合システムの限界状態−
 
正会員 ○籠本真成武*
同 濱田 義之**
同 窪田 由秀***
同 三井 篤****
 
1.はじめに
モーメント抵抗型ラーメン構法の性能は、接合部の性能、信頼性、コストが重要な要素である。
接合部の性能評価には、耐力、剛性、靱性などがある。
耐力は柱や梁を大断面に、剛性に関しては、ボルト、ドリフトピンで緊結、靱性には限界状態の研究。
本研究は、施工性・信頼性を考慮して開発した新接合システムが耐力と剛性、靱性にも優位に機能するか確認するために、接合部の限界状態を検討したものである。
 
2.新接合システムの加力試験
2.1 試験体及び試験方法
[試験体]
柱は、H形鋼250×125(SS400)、梁は、欧州アカマツ集成材150×330(E105-F300)で構成される柱―梁接合部の+字型試験体を、3セット制作した。
[試験方法]
梁の両端をピンとし、梁が平行移動しつつ変形するように制御(図1、図2)して、柱の自由端を油圧ラムにより加力した。加力は、正負繰り返し水平交番載荷とし、変形を1/450rad、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50の3サイクルでおこなった。
最後に、1/15を加力して、接合部の限界状態(図4)に至った。
[試験場所]
徳島県立農林水産総合技術支援センター森林林業研究所内木材需要開発センター住宅資材性能試験棟にて、面内せん断試験装置(図1)を使用して実施した。
図1 試験体の取り付け状況
図1 試験体の取り付け状況
図2 試験体および試験装置概略図
図2 試験体および試験装置概略図
図3 金属プレート併用ラグスクリューボルト集成材
図3 金属プレート併用ラグスクリューボルト集成材
 
2.2 モーメント抵抗値の計算
モーメント抵抗値を計算するために必要な層間変形角と接合部回転角を求める変位を測定した。
 
3.新接合システムの限界状態
H型鋼とCT型鋼の合成柱に、梁の集成材をラグスクリューボルト(参考文献1〜3)を用いて、直接接合する方法が考えられるが、現場施工の信頼性と簡便性を考慮し、金属プレートを併用(図3)、テンションボルトで緊結した。
金属プレートの変形(図4)から、接合部に靱性を付与できる変形能を解析できれば、地震エネルギーを緩衝してくれる機能を有する画期的接合システムとなる。
[限界状態]
金属プレートが変形(図4)し、靱性を付与している。
ラグスクリューボルトの引き抜きも見られる。
[割裂破壊]
集成材が割裂(図5)し、ラグスクリューボルトの引き抜きを容易にしている。
今後の検討課題としたい。
[復元力特性]
新接合システムの復元力特性を図6に示す。
最大荷重は、30.38 kN を示した。(縦軸:荷重、横軸:回転角)
図4 新接合システムの限界状態
図4 新接合システムの限界状態
図5 集成材の割裂破壊
図5 集成材の割裂破壊
 
4.まとめ
モーメント抵抗型ラーメン構法の柱フレームに、H型鋼とCT型鋼の合成柱、梁フレームに集成材梁を用いるハイブリッドWS 造の開発は、金属プレート併用によるラグスクリューボルトの新接合システムを創出した。
金属プレートを併用した変形(図4)が実験で確認された。
さらに、変形能を高めるための改良を行っていく。
図6 新接合システムの復元力特性
図6 新接合システムの復元力特性
 
謝辞
本研究に使用したラグスクリューボルトと集成材は、京都大学生存圏研究所小松幸平教授LSB 研究会メンバー銘建工業(株)にご協力いただき、H形鋼とアタッチメントの制作は、日向建設(株)の湯前浩二社長にご協力いただいた。
実験は、徳島県立農林水産総合技術支援センターの坂田和則氏にご協力いただき、小松幸平教授から適切なご助言をいただいた。
本研究は、(株)ホーム・ズーの木村俊彦会長、遠藤秀樹社長、(有)ゆう建築設計事務所の奥田勇社長に多大なご助力をいただいた。
ここに、関係各位の暖かいご支援に対して、深く謝意を申し述べます。
参考文献等
1) 中谷誠, 小松幸平:ラグスクリューボルトの引抜き性能発現機構 (第1 報)−先孔直径, 埋込み深さ, 埋込み方向, 縁距離が引抜き性能に与える影響−、木材学会誌、Vol. 51, No. 2p.125-130、2005 年
2) 中谷誠, 小松幸平:ラグスクリューボルトの引抜き性能発現機構 (第2 報)−繊維平行方向引抜き理論の構築−、木材学会誌、Vol. 51, No. 5 p.311-317、2005 年
3) 中谷誠, 小松幸平:ラグスクリューボルトの引抜き性能発現機構 (第3 報)−繊維直交方向引抜き理論の構築−、木材学会誌、Vol. 52, No. 3 p.160-167、2006 年
* (有)ケイツー建築設計所
** (有)エス・ディ・ルーム
***(有)コンティス
****三井プロジェクト総合研究所 農学博士
 
 
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